≪制作秘話≫≪RPGツクール2000の巻≫
古くはMSXのRPGツクール「Dante」からのシリーズで、
ワープロで文章を作るようにRPGが作れてしまう、超おもしろソフトです。
ゲームでなくても、プレゼンテーションに使ってもおもしろいですよ〜
イントロダクション − ある日突然、Y氏からのメールが |
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================================= 電子メール:作曲のお願い Date: Mon, 26 Apr 1999 13:36:53 +0900 From: Y氏 To: 北神 陽太 いつもお世話になっております。Yです。 ご無沙汰しております。 いきなり本題で申し訳ありませんが、作曲をお願いしたいと考えています。 ソフトは、現在開発中の『RPGツクール98(仮)』です。 Windows用RPGツクールの最新作になります。 同じ系統のソフトのお願いばかりで申し訳ありませんが、 やはりRPGツクールの作曲を一番よくご存じなのは北神さんだと考えて お話をさせていただきました。 前回と同じくGMのMIDIで40〜50曲ぐらいをお願いしたいと考えています。 ご相談したうえで決めたいと思います。 ソフトの発売時期は2000年3月を予定しています。 ================================= 噂は聞いていたけど、実際は発売の1年ほど前(1999/4/26)から準備しています。 で、北神の返事は・・・、 ================================= いつもお世話様になっております。北神です。 <作曲料について> 内容によって違いますが、ポピュラーと違ってクラシックは手間がかかります。 他の原稿料などと含めて面倒を見てもらってました。(^^; まぁ、予算があるでしょうから、その範囲でやりましょう。 <制限など> 1.想定しているハードウェアのスペックを教えて下さい。 現在、自宅のマシンは Pentium 133Mなので。 来年だと、P3 500M が当たり前になりそうですが・・・!? 2.想定している音源は? RPGツクール95は、音ツクの音源でした。 3.仕様の変更はありますか? 前々から、イントロとループを別々に設定できるように、というのがあります。 連休中に、曲のリストを作成しておきます。 ================================= と、まぁこんな具合です。この後、作曲リストなどの打ち合わせをメールで。 駆け出しの頃(10年前)は、編集部に出向いてイメージイラストとかを見ながら打ち合わせを していたんですが、最近は「○×用のBGMをxx曲お願いします」といったメールで。打ち合わせ はしませんね。(^^; 最後に編集部へ行ったのは、一昨年だったかなぁ。 その原因は、メールの発達です。昔は夜中の3時に、編集部まで車で行ったことがありました。 音楽ツクールのときかな。便利になった反面、直接、接することが無くなりました。 今回から、本格的な契約書を交わして(印紙を貼る)仕事をするようになり、発売時期や予算、 開発スケジュールなど、厳密に進めるようになりました。 (そういえば、セガサターンの音楽ツクールは・・・?)
さて、作曲でも初め・・・って、ものすごく困ったぞ!!! |
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困った(1) 長年使っていたRGBディスプレーが壊れた。買い直すと10万ほどするぞ。 困った(2) 仮住まいのアパートのため、機材は全部実家に置いてある。ここに置けないのだ。 新居が決まるまで、無理? 困った(3) 8月に新居へ引っ越し。デバッグをするのに、今のWin95のスペックでは無理? 結局、Win98モデルを購入。 困った(4) 作曲に使っていたソフトが動かん!!! で、ネットでいろいろ探したけど、ロクな ものがない・・・。で、クジラ飛行机のkfmを見つけた!!! こりゃイイぞ!!!
2.5ヶ月で60曲できるか? |
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結局、作曲を始められたのは1999年9月に入ってからでした。その間、アイデアを貯められたので、 ネタには困らないけど、締め切りは11月いっぱい。あと3ヶ月なので、月20曲ペース、 これまでの最高は2ヶ月で40曲なので、できるかな? で、kfmを使ってみるのだが、いろいろなパラメータの効果がどうもつかめない。パラメータ の設定と、初期設定を決定するのに2週間もかかってしまった。あと2.5ヶ月だ。 まずは、かなり暖めていた「オープニング」を作り始める。実は、一番時間がかかるんだよね。 いろいろなアイデアや効果を盛り込んで、自分で気に入るまで作り込まなければならない。使い 慣れていないkfmを使いこなすには、妥協は一切なし。 なぜかというと、この設定ですべて統一してしまうので、途中で変えると後から全体のバランス を変えるのが大変なのだ。オープニングだけで1週間。あと2ヶ月と1週間だ。
サクサクと25曲 |
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RPGといっても、ツクールなので汎用的なBGMを作るのだが、北神の場合どうしても個性を入 れてしまう(^^; 以前から「もっとふつうの曲でいいんです歌謡曲みたいな・・・」といわれ ているけど、ゲームの場面をイメージすると、どうしても別な方向に・・・。 収録されているサンプルゲームを遊んでみればわかるけど、最近はふつうのファンタジーRPG から脱却した、新しいジャンルに挑戦しているクリエーターが増えている。音楽だって今まで 使われていなかった手法でもいいよね。 でも、新しいジャンルの場合、世界観を理解してもらうために、説明が多くなってしまう場合 があるので、なるべく自然な入り口にしないと、よくわからない世界になるので注意しなくては。 さて、締め切りが近いときは、「できる曲から作る」で、途中でアイデアに詰まったら、別の 曲を作り始める。どうしても行き詰まったり、気に入らない曲は、迷わずボツ。こうしないと、 先に進まないからね。とにかく前進のみ。 昼は別の仕事なので、実際に作曲に専念できるのは、平日で11時から深夜4時(朝だ) あとは土日で仕上げなければならないので、1日平均2曲はできなければいけません。 これ、かなりキツイです。以前は連載の原稿やムックのBGMとか重なって、毎週締め切りに 追われたことがあったけど、それに比べれば作曲だけに専念できるのでラクかな。 RPGの曲を作るとき、北神の場合頭の中でゲームのストーリーをイメージして、ストーリー の順番で曲を作っていく。たとえば、オープニング、街、フィールド、戦闘・・・、音楽だけ でゲームをやっているようなイメージなのだ。こうすると、そのとき欲しい曲のイメージがつ ながりやすいのだ。メリハリもつけやすいしね。 10月の終わりには、どうにか28曲できたのでした。でも、あと32曲!!!
半分を越えたあたりから辛くなります |
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作曲をするとき、初めはいいペースなんだけど、ある一定を越えるとペースが落ちる。アイデア に詰まるんだよね。そんなときは、作曲をやめてしまう。ゲームをやったり、飲みに行ったり。 充電しないと放電できないのだ。 今回は、「コミカル系の曲を追加」という要望があったのですが、コミカルな曲ってダサイ曲と 紙一重なんだよね。だからあまり得意じゃないのだ。で、イメージを変えてコミカルを「懐かしい」 とか、「さびれた田舎」のようなイメージに解釈して、オカリナやバンジョーを使って、ちょっと 時代遅れの雰囲気を出してみた。 ゲームのBGMというと、「ハデな曲」という要望が多いので、最初はハデな曲から作ることが多い んだけど、ほとんど音が無い静かな曲も絶対必要。で、静かな曲はスランプに陥ったときに作る。 というか、ハデな音楽を聴きたくなくなってるんだね。目先や方向を変えると、以外とできるもの なのだ。ダンジョンやゴーストタウンあたりかな。気分も丁度そんな雰囲気だし。 それでも、「安らぎ」と「戦闘」は最後まで苦労しました。RPGツクール95より劣るわけには いかないし・・・。自分に負けるのはイヤですな。自分の作った曲がライバルのようなもんです。
ついに完成!!! ところが・・・? |
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スランプに陥りつつも、静かな曲とジングルで曲数をかせぎ、いよいよ最後のエンディングの曲。 エンディングは、仕事の終わりもかねているので、いままで作った曲を振り返り、反省しながら 想い出をつづっていきます。 毎日午前3時まで3ヶ月間、平均睡眠時間4時間、どこにも出かけず・・・、作曲って孤独で地 道な作業です。自分で作った曲「安らぎ」、「活気」などを聴いて、逆に励まされたりしながら、 終演を迎えようとしています。ちょっとさびしいもんです。ちょうどゲームをクリアしたときの 「あの」感じです。 ところが、すべての曲をY氏に送ってまもなく、次のようなメールが・・・。 >今回のデータは、前回(RPG95)のときと比べて >音量が小さいようなのですが、何か理由があるのでしょうか? RPGツクール95と同じ音量にしていなかった!!! これは、効果音とか他のBGMとのバランスで 調整しなければならないのだけれど、私のところにあるRPG2000のバージョンでは効果音がない。 しかも、音量は曲中に細かく指定しているので、相対的に全体の音量を上げなければ大変だ。 しかたなく、ボリューム指定を最大にして、それでも足りない場合エクスプレッションを上げる ことで対応。細かいベロシティーを調整するのは、もはや無理だったのでした。 さらに、midiファイルの仕様として、イニシャライズで先頭を1小節空ける変更があって、 変更したのはいいが、繰り返しの時、イニシャライズが必要だったりで、1チックずらしたり 細かい修正作業が残っています。 そして、「あと2曲追加」合計62曲。締め切りをちょっと延ばしてもらったけど、どうにか 年内に完成することができました。 ●ノート 送付したBGMファイルの回数 7回(409k Bytes) 打ち合わせメール 35k Bytes 電話による連絡 0回 全曲、予定通り、ボツ曲は相変わらずなし。 ・・・ほとんど打ち合わせ無しで、終わってしまった。たまには編集部に顔を出さねば。 ●謝辞 『kfm』が無かったらどうなったことやら。クジラ飛行机=ミネ氏に感謝!!! (現在、kfmはSakuraというソフトに移行しました。リンクを参照してね)
あとがきの後書き |
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■最後にマニュアルには書かれていない、BGMの説明を紹介しておきます。 ・音楽ツクール+の音源でチューニングしてあります。(以前はFM音源対応) ・同時発音数は、最低32以上、データ内にエコーやノイズを入れてあるので、リバーブはOffを推奨。 音の定位を完全ステレオにして、音場再生に広がりと奥行きを持たせています。 (これまでと、まったく音場空間が違います。ステレオでお楽しみください。) ■注意! ・曲の先頭はイニシャライズデータが入っていて、演奏は2小節目から始まります。 ・ループのコントロールチェンジ"111"の次にタイムベース96で1チック空いています。 ・また、エコーやディレイなどで、リアルタイムに近いデータが含まれているため、 音楽ツクールなどで楽譜は正常に表示されません。 ■ここで紹介しているのは、北神が作曲した62曲です。
RPGツクール2000 BGM北神リスト | 曲の解説 |
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●ジングル | (ループしない曲です) |
Jアイテム1 | アイテムの発見、取得 |
Jギャグ1 | コミカルなギャグに |
Jギャグ2 | コミカルなギャグに2 |
Jファンファーレ1 | シンプルなファンファーレ |
Jファンファーレ2 | オーケストラの豪華なファンファーレ |
Jファンファーレ4 | ファンファーレ風 |
Jファンファーレ5 | 大きなレベルアップ |
Jファンファーレ6 | イベントクリア風レベルアップ |
J疑惑1 | 疑いのある失言などに |
J宿1 | 鳥の鳴き声入り |
J宿2 | 気分のいい目覚め |
J戦闘終了1 | 短い戦闘終了 |
J戦闘終了2 | 長めの戦闘終了 |
J戦闘終了3 | イベントクリア風の戦闘終了 |
J謎1 | 謎を発見したときに |
●特別 | (特別なイベント用です) |
エンディング1 | 想い出を振り返るエンディング |
オープニング1 | ハデなオープニング、苦労した曲です |
ゲームオーバー1 | 戦士の休息。普通のゲームオーバー |
ゲームオーバー2 | コミカルなゲームオーバー |
●町中イベント | |
ゴーストタウン1 | 人の気配がしない廃墟 |
ゴーストタウン2 | 活気のない村 |
活気1 | 活気あふれる大きな城下町などに |
城1 | 城の中 |
城2 | 王室 |
村1 | さびれた小さな村 |
町1 | なつかしい町 |
町2 | 楽しい町 |
明るい市場1 | サンバ系にぎやかな市場 |
●部屋のイベント | |
安らぎ1 | 安心の中にも、使命への勇気を奮い立たせる曲 |
安らぎ2 | 忘れていた、なつかしさを想い出させてくれる曲 |
教会1 | オルガンによる教会の曲 |
店1 | なんでも売っているスーパー |
店2 | そろばんをはじく商店 |
闇市1 | 怪しいモノを扱う裏通りの店 |
泥棒1 | コミカルでちょっとまぬけな感じ |
●移動イベント | |
ダンジョン1 | 冷たい地下室のような場所 |
ダンジョン2 | ドラキュラの館 |
ダンジョン3 | コミカルなおばけ退治 |
フィールド1 | 軽快に進む旅 |
フィールド2 | 大勢の行進 |
フィールド3 | 果てしない行進 |
乗り物1 | 広大な場所を移動。フィールドにも |
乗り物2 | コミカルな移動 |
探索1 | 未知の場所の探検 |
塔1 | 不思議な雰囲気の塔 |
塔2 | 高い場所 |
船1 | 小さな小舟 |
船2 | 飛行船 |
●戦闘イベント | |
ボス1 | 中ボスなど、危機感のあるロック系 |
ボス2 | 最終ボス。おどろおどろしい圧倒的な恐怖感のある曲 |
戦闘1 | スピード感のある戦闘 |
戦闘2 | 危機感のある戦闘 |
勝利1 | ボスとの対決で勝利。ストーリーの章の終わりなどに |
敗北1 | 戦闘に負け孤独なときに |
●不思議なイベント | |
神秘1 | 光が差し込むような雰囲気に |
神秘2 | 広大な天空の世界 |
秘宝1 | エスニック調ガムラン音楽 |
妖精1 | 恋いの芽生えなど |
●心のイベント | |
怒り1 | だんだんとこみ上げてくる怒りや戦闘準備 |
悲しみ1 | 大切な人の死、別れ |
別れ1 | それぞれ別の道を歩むとき、仲間との別れ |
勇者1 | 勇者のテーマ |
≪制作秘話≫≪RPGツクール2000の巻≫2000/04/05版 終わり
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